バイオリンをはじめ楽器練習で頭を悩ませることが多い近隣への音(騒音)の問題。その対策として多くの方が検討される防音室の導入。種類も値段も購入方法も様々で迷ってしまいます。
私の防音室購入・使用経験をベースに、これまで防音室の「防音性能」「スペース」のことについて説明してきました。
今回はその他、防音室を設置する時に悩むことの多い「費用・エアコン・重量」の問題をまとめて解説します。
購入方法
防音室を購入する方法は主に三つに分かれます。
①新品購入―ヤマハやカワイをはじめとしたメーカーさんから直接購入
②中古購入―防音室はググると中古販売のサイトが色々見つかります
③知り合いから譲ってもらう―演奏者の仲間内で「引っ越すから家の防音室使わない」みたいな話しが良くあります。
新品購入
当然新品を買うのが一番費用がかかりますが、もしお金があるならメーカーさんから新品を購入するのをおススメします。防音室は専門の業者さんに組み立ててもらうものです。組み立てるものなのでバラして移設が可能ですが、相当大掛かりな仕事です。
移設を繰り返すと接続部等にダメージが生じますし、気づかない内に防音性能に欠陥が生じるリスクがあります。新品が買えるならそれが一番です。
中古購入
我が家は新品を買うお金が無かったので中古を購入しました。エアコンの穴の数を数えるとこれで3度目の移設と思われます。幸いにして状態は良く、しっかり防音してくれていますし、内部も綺麗でまったく問題ありません。何と言っても安く購入できたのでそれが一番のメリットです。
中古ですと、知人から譲り受けることもあるでしょう。知っている人であれば防音室の機能を確認できるので安心です。ただ、専門の業者さんに解体と移設を頼まなければいけないので、それだけでも5~10万くらいの費用を見込んでおく必要があります。
費用の比較
性能編に書いたように、防音室は千差万別。大きさ、防音性能、年式、メーカーによって全然違うので単純比較は不可能。
それを前提に、人気がある3畳タイプのDr-35で現行品、ヤマハのアビッテクスとカワイのナサールという二大巨頭をザックリ値段で比較すると、大差ありませんが若干ナサールの方が安めです。
120万~140万くらいが定価になっています。ただ繰り返しになりますが、自由設計とか色々なオプションがあるので単純比較はできません。
一方、新興業者さんからも防音室販売されています。ビックリするほど安いものもあります。注意点として、防音室の場合費用と防音性能に関心が集中しやすいですが防音室内の響きの違いは非常に重要なポイントです。
響きがまったく無かったり、響き過ぎていたり、防音室という特殊な環境であるだけに響きのコントロールが適切になされていないと練習環境として著しく不快なものになってしまいます。
ヤマハやカワイなど大手楽器メーカーの防音室は、この点非常によく考えられていますし、個人の好みに合わせて後からも響きを加えたり、抑えたりと調整できるようになっています。
一方、安い防音室が防音性能はあっても響きが悪く、練習にならないようなこともあるので注意が必要。費用面だけで考えるのは危険です。
中古の費用
中古の防音室は新品以上に千差万別。年式によっても大きな違いがあるので比較は難しいです。
参考までに我が家は5年落ちくらいのカワイ・ナサール三畳タイプ・Dr-35を75万くらいで購入しました。中古防音室の販売サイトで購入し輸送・工事費に5万円強かかりましたが、現在に至るまで快適に使うことができています。
5年落ちで新品時の7割~8割くらいの値段だと思います。防音室の中古は新品に比べれば安いけれど劇的に安いわけでは無いという微妙な価格設定。
部品にダメージが無ければ防音性能が低下することも無く、5年・10年落ちでも快適に使えるので中々価格が落ちないのだと思います。実際、5年落ちの防音室を購入して5年経ちましたが何一つ問題はありません。
逆に中古であまりにも値段が安いものは、何か理由があると考えた方が良いです。タバコやペットの匂い、汚れ等購入前にチェックしてください。
エアコン
防音室内の暑さ
防音室はとにかく暑いです。音を逃さない構造は熱も逃さない構造です。
大手メーカーの防音室は換気扇が設置されていますが、これには外気を取り込んだり熱を放出したりする機能はありません。本格的に長時間練習するならエアコンは必須ですが、0.8畳タイプなど小さな防音室はエアコン設置はスペース的にできません。防音室のタイプを決める際に空調をどうするかは考慮する必要があります。
私も当初そうしていたのですが、防音室内にエアコンを取り付けず防音室を設置した部屋のエアコンから時々扉を開けて冷気を取り込むのは一つの方法です。
ただ、楽器練習はエネルギーを使うものですから直ぐに暑くなってしまいます。やはり防音室内にエアコンを取り付けることを私はお勧めします。快適な温度を保つことで練習効率はグンと高まります。
エアコン設置時の問題
困ったことに防音室にエアコンを設置する際に、防音室と部屋の形状によってどうしてもエアコン設置に必要な勾配が取れないことがあります。我が家もそうでした。
最初「取り付けられない」と言う電気屋さんが面倒な工事を敬遠しているのかと疑ってしまったのですが、ネットで調べると同じような問題に遭遇している方が割と多いことを知りました。
クーラーは稼働時にドレンホースから水が外に排出される構造になっていますので、ホースが外に向かって下がっていなければいけません。適切な勾配がとれていないと水がエアコン内部にたまって故障してしまいます。防音室の場合、穴を開けられる場所、高さに色々制約があるので、このホースの勾配が取れないケースが結構あるようです。
私も一度は諦めたのですが、エアコンの無い防音室は本当に暑くて大変です。色々調べた結果、写真のように防音室内にエアコンから排出される水をためるタンクを置く方法があることを知りました。電気屋さんに相談したところ簡単に出来るとのことで、この方法で我が家もエアコンを設置することができました。
クーラーを使用する際は定期的にタンクにたまった水を捨てなくてはいけませんが、10ℓのタンクで4・5日に一度くらいのことなので大した手間ではありません。これはおススメの方法です。
防音室の重さ
防音室を設置する際に、家屋が重さに耐えられるかどうか心配なさる方が多いと思います。特に2階への設置となると心配。我が家は築30年の2×4の一戸建て。2階にしか設置場所が無かったので心配をしました。
結論として、極端に家屋が痛んでいるような特殊な事情が無ければ通常2階でも防音室設置は可能です。
家屋の対荷重は建築基準法で定められており、床1㎡当たり180kgの重さに耐えられることが義務付けられています。
我が家を例にすると、3畳タイプの防音室で1平方メートル辺りおよそ110㎏の重さになる計算でした。つまりかなり余裕があるのです。ただしこれは防音室の中かが空っぽである時の計算。譜面台やカラーボックス程度の本箱を置いてもほとんど変わりませんが、一番の問題はピアノの設置です。
ピアノの重量はアップライトピアノが200キロ強、グランドピアノは300キロを超えます。防音室の重量にピアノの重さを加えるとグランドピアノであれば確実に建築基準法の1㎡当たり180㎏を超えます。アップライトピアノでもギリギリの重さになりますので避けた方が無難。
電子ピアノであれば通常の住宅で2階への防音室設置も可能ですが、アップライトやグランドピアノの設置を考えるのであれば2階は避けること。もしくは補強のための工事をする必要があります。
まとめ
費用、エアコン、重量について防音室購入の参考になる内容をまとめました。ご一読いただいて分かるように、千差万別で中々単純に「これ」と言い切れるものではありません。
防音室は一度設置すると業者さんに頼まない限り移動することができません。色々な情報をもとにして綿密に計画なさることをおススメします。繰り返しになりますが、防音性能・スペース・空調・重量・響き、これらのことを総合して費用面での相談になります。
大手の防音室であれば本当によくできているので、上記のことをチェックして購入すれば失敗はあまりないだろうと思います。安めの新興業者さんの防音室であれば、なるべく一度販売所に足を運んで自分の楽器で音を出してみた方が良いです。練習環境が悪いとストレスになりますので、せっかくの防音室購入が無駄になってしまいます。
高い買い物、大きな買い物ですのでくれぐれも慎重に検討なさってください。