高温多湿、日本の梅雨は弦楽器には大敵です。
ヨーロッパのサッカー選手が梅雨時に日本で試合をして、ジメジメとして暑い気候にお手上げのコメントをしているのを目にしますね。ヨーロッパでは経験することの無い気候です。当然、ヨーロッパで作られることの多い弦楽器にとって、想定されていない気候に晒される梅雨は要注意。一年でもっとも注意が必要な季節といっても過言ではありません。
破損だけでなく、湿気によって楽器の鳴りは確実に悪くなります。今日は高温多湿の日本の梅雨を弦楽器が健康に乗り越えるための注意点をまとめます。
湿度は大敵
梅雨時の弦楽器のトラブルは主に下記二点です。
a.湿気による木の膨張
言うまでもなく木が水分を含むと膨張します。逆に乾燥すると収縮します。伐採した直後は水分を多く木が含んでいるので収縮の度合いが大きいですので、伐採後数十年寝かして乾燥させてからでないと楽器に使うことはできません。膨張・収縮によって負荷がかかり接続部が剥がれたり、割れたりが起こります。
それでも木が湿度によって変化するのは自然なこと。バイオリン製作者はある程度膨張・収縮を見込んで制作しています。
日本の気候の問題は梅雨時期の湿度の高さだけでなく、冬季の乾燥時との湿度の差が激しいことにあります。年間を通して湿度が乱高下するので、楽器への負荷が大きいのです。ですから梅雨時の湿気対策と冬季の乾燥対策をセットで考え、年間を通して膨張・収縮の幅抑えてあげる必要があります。
b.カビ
弦楽器は木なので当然カビます。何でもそうですが、一度楽器にカビを生えさせてしまうと完全に取り切るのは大変。カビは、私たちの目で見つけられる段階ですでに繁殖が激化しています。
目に見えない微細なカビが一度ついてしまうと、死角の多い弦楽器ですから取っても取ってもまた直ぐ出てくるようになってしまいます。カビを生えさせないようにすることが何より大切です。
湿気対策
コマ目に弾く
一番の湿気対策はコマめに弾いてあげることです。楽器ケースから取り出して弾くことによって空気が通り、適度な振動が加わり楽器のコンディションが整います。
逆に言うと湿気で一番怖いのはしまいっぱなしになっている楽器です。週に一度でも良いのでケースから出して弾いてあげましょう。
湿度管理
楽器を置いている部屋の湿度を、除湿機やエアコンを上手く使って50%前後に保つよう心掛けましょう。体感ではなく、正確な湿度計が必要です。神経質になりすぎる必要はありませんが、45~55%の間になるべく収まるように年間を通して気をつけたいものです。
湿気対策おススメアイテム!
楽器は頻繁に持ち運ぶことが多いものですから、練習室の湿度調整だけでは間に合わないことがあります。楽器ケース内の湿度管理が有効です。
市販の下駄箱用のような除湿剤ではなく、弦楽器用のものを購入しましょう。その際に「弦楽器用除湿剤」ではなく「湿度調整剤」がお勧めです。↓のような湿度調整剤は乾燥と湿気と両方に機能します。
周囲の湿度が高くなると水分を吸着し、湿度が低くなると水分を放出します。このようにして、湿度変化の激しい日本の気候でも乱高下を防ぐことができます。3・4か月に一度交換する必要がありますが、1000円程度なのでこれで楽器の破損を防ぐことができたら安いもの。購入をおススメします。
まとめ
高温多湿の日本の梅雨は弦楽器楽器管理の難しい季節ですが、コマ目に弾いてあげることと、部屋・楽器ケース内の湿度を調整することで乗り越えることができます。逆に放っておいて、梅雨にトラブルが起こらなくても反動で乾燥期に湿気のしっぺ返しを食うことになります。
湿度の低いヨーロッパから来た弦楽器であることを忘れず、快適な環境作りを心がけましょう。湿度管理がされている楽器は、音の鳴りも最高です!