今年も猛暑が続いています。高温はデリケートな弦楽器には大敵。人間だけでなく弦楽器にも熱中症対策が必要なのです。
今日は夏の弦楽器管理の注意点とその対策をお伝えします。
夏の弦楽器管理
弦楽器はそれぞれの季節で管理の注意ポイントが違いますが、夏はなんといっても暑さに注意。弦楽器の暑さ対策を理解するためには、膠(にかわ)の性質を知っていることが必要です。
接着剤・膠(にかわ)の話し
弦楽器の木の接着に使われているのは、膠(にかわ)と呼ばれる昔ながらの接着剤です。膠はなんと5000年も昔から接着剤として使われている長い歴史がありますが、現代の接着剤にも負けず劣らずの強い接着力を持っています。
この膠の欠点は熱に弱いこと。膠は動物の皮や骨などを大体60℃くらいで煮出したものです。つまり固まった膠は、そのくらいの温度で再び溶け出してしまうのです。ただこの欠点こそが、弦楽器で現代も膠が重宝される利点でもあります。
どんなに丁寧に扱っても弦楽器のトラブルは避けられません。時にはパーツを外して修理しなければいけないこともあります。
こんなときに接着部を温めることで膠を溶かし、楽器を痛めることなく開け閉めができるわけです。温めることで用意に溶かし、また固めることができる。弦楽器にとってこれ以上ない接着剤が膠です。
弦楽器にはこういう性質の膠が使われていることをいつも頭に置いておく必要があります。
車内の高温要注意
夏の車内は危険です。日中一時間、窓を閉めていた場合車内温度は50度を超えます。この温度は膠が溶け出す可能性大です。膠が溶け出したら接着部分は当然はがれます。一大事です。
ということで、夏は車内に弦楽器を置きっ放しにはしないでください。
ただヴァイオリンなど持ち運びの楽な楽器は良いですが、コントラバスは大変。サービスエリアでトイレに一緒に持っていくわけにいきません。
その場合、なるべく日陰に車は停めて窓を少しだけ開けてササッと行くしかないですね。短時間であれば注意は必要ですが神経質になりすぎる必要はありません。
しかし私の経験ですが、エアコンが効いた車内でも渋滞時など後部座席に日光がガンガン当たってかなり楽器が暑くなっているようなことがあります。窓に日よけをつけるなど夏のコントラバス輸送には注意が必要です。
日当たりの良い室内も要注意
日当たりの良い部屋も怖いほど室内温度が上がりますね。我が家の楽器部屋には現役の楽器たちがたくさんありますので、ちょっともったいないですが常時エアコンをつけています。
ただガンガン冷やす必要はありません。28℃くらいの高めの設定で大丈夫です。楽器トラブル時の修理費用を考えたら電気代は安いもの。
もちろん楽器に直射日光があたるような状況は絶対NGです。膠もそうですが、楽器表面に塗られているニスが溶け出してしまう危険性があります。
暑い夏、人も楽器も健康に乗り越えましょう!