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コントラバス 弦楽器あれこれ

なぜ吹奏楽にコントラバスが入ってる?

投稿日:2019-08-31 更新日:

吹奏楽とは字のごとく吹奏楽器で編成するオーケストラのことです。その中に打楽器も入っています。リズムパートが必要なことは誰でもわかりますが、ではなぜ弦楽器のコントラバスが入っているのか。吹奏楽部のコントラバス講師は何度もこの説明を求められます。

今回は「なぜ吹奏楽にコントラバスが入っているのか?」についてお話しします。この記事を読むと吹奏楽とコントラバスの関係がすっきり分かります。

チューバ、コントラバス、吹奏楽の歴史

吹奏楽の歴史

吹奏楽の歴史をググると「古代エジプト時代に・・・」と出てきますがそれはそれとして、現代の吹奏楽の基礎となる音楽は17世紀あたりとされています。

チューバの歴史

吹奏楽において最低音で土台になる楽器といえばチューバです。このチューバの誕生日は1835年9月12日。意外なことですがチューバという楽器の歴史は浅く、まだその誕生から200年経っていないのです。YAMAHAさんの分かりやすい説明

つまりチューバの誕生は現代吹奏楽が成立して200年も後のことなのです。

コントラバスの歴史

最後にコントラバスの歴史ですが、コントラバスの原型になったヴィオローネとうい楽器は16世紀にはすでに活躍していました。ですから、17世紀に成立した現在の吹奏楽のスタイルにおいて、元々最低音を支えていたのはコントラバスだったのです。

意外なことに、コントラバスは吹奏楽のチャーターメンバーなのです。「なんで吹奏楽にコントラバスが?」などと言われる筋合いはありません!?

コントラバスとチューバの共存

やがて19世紀に吹奏楽器で最低音を担えるチューバという楽器が誕生し吹奏楽に加入します。いくらコントラバスがチャーターメンバーとは言え、チューバのあの音量。吹奏楽器であの音域を出せる楽器が登場した以上、コントラバスはお役御免となるのが普通に思えます。

しかし現在に至るまで、吹奏楽の中にコントラバスは立派にその立ち位置を残しているのです。

コントラバスの役割

コントラバスを愛した作曲家、アルフレッド・リード

吹奏楽の巨匠アルフレッド・リード氏の曲では、ピッチカートなどコントラバスがその特徴を生かして単独で活躍する場所がたくさんあります。リード氏自身が指揮する吹奏楽団で何度も演奏をしましたが、コントラバスに対する具体的な要求をしばしばしてくださいました。

ただ、中学・高校の吹奏楽部で取り組む曲はチューバなどと被った音が求められることが大半でしょう。

私が指導に行っている学校の中で、一番多いところでコントラバスが4名います。これだけの人数がいると音ははっきり聞こえますが、1人・2人であればチューバやトロンボーン、ホルンなどのように「それ」と分かるような音をコントラバスが出すことはできません。

そこでしばしば吹奏楽部の顧問から「コントラバス、もっと大きい音を」と要求されてしまいますがこれは本当に辛いこと。吹奏楽器のようなボリュームをコントラバスに要求されてもそれは無理、不可能です。

そもそも、そういうことであったらとっくにコントラバスはチューバとバトンタッチして吹奏楽からは脱退していたはず。コントラバスを2人置くより、チューバを1人増やすほうが低音ははるかに分厚くなるのですから。

音の聞こえないコントラバス

「低音音色変換装置」としての役割

吹奏楽器の低音はボリュームはあるのですが音が直線的に聞こえます。一方コントラバスの低音には弦楽器特有の広がりや深みがあります。吹奏楽で求められるコントラバスの役割は、直線的な吹奏楽器の音色に深み・広がりを加えることにあるのです。

ですから、吹奏楽の中でコントラバスを聞こうとする時に、コントラバスの音を探すのではなく低音全体の音色に注目してください。聞こえてくる音はチューバやバスクラ、バストロでしょう。しかしその中にコントラバスがいることで、吹奏楽器の低音に深みや広がりが生まれます。低音の響きの違いとしてコントラバスを聞くと吹奏楽においてコントラバスがお役御免とならなかった理由が実感できるようになります。

つまり、コントラバスの吹奏楽における役割はコントラバス単体の音を届けることよりも、低音の響きを変換する言わば「低音音色変換装置」としての役割なのです。

ですから、吹奏楽の中でコントラバス奏者は音量を出そうとガリガリ弾く必要はありません。むしろ楽器を伸び伸び響かせること。聖母マリアのような心境でドデカイ吹奏楽の低音を包容してあげるイメージで大らかに演奏して欲しいのです。

まとめ

コントラバスは弦楽器の特性上、吹奏楽の中で特別楽器の扱いに苦労がありメンテナンスにお金もかかります。演奏法も他の楽器とまったく違うので、指導者・顧問の先生は苦慮されることでしょう。

けれども逆に言えば、そういうコントラバスという楽器がチューバ誕生から200年経ってなお吹奏楽に欠かせない楽器としてポジションを確保してきていることに、コントラバスの欠かせない存在価値が表れているとも言えるのです。

発言力があるわけでも面白いことを言ってみんなを笑わすわけでもない地味な存在。「でもあの人が居ると場の雰囲気変わるよな」と独特の存在感を示す人っていますよね。吹奏楽の中のコントラバスはそんな存在と言えるかもしれませんね。

吹奏楽部に入部して、コントラバス担当になって、でも右も左も分からないという時。とりあえずこの1冊はありがたい。楽器の扱い方なども丁寧に書いてあるので、顧問の先生に購入をお願いしています。

継続してコントラバスを学んでいこうと思われる方におススメの教則本。コツコツ練習するのに最適。とにかくこの教則本をちゃんとこなしていったら相当力がつきます。

-コントラバス, 弦楽器あれこれ

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