バスオさんの部屋

ヴァイオリンやコントラバスなど弦楽器のことを中心に、子どもさんのお稽古や楽器管理のアドバイス。アマチュア・初心者の方のおススメ楽器など。

弦楽器あれこれ

良く分かる、バイオリンの四つのモデルについて

投稿日:2019-09-05 更新日:

バイオリンは演奏したり聴いたりする楽しみだけでなく、楽器の特徴や歴史を知ることで職人の技や工夫、それぞれの楽器の個性を楽しむことができます。

自分の楽器を知ることで愛着が増し、演奏することの楽しさも倍増です。せっかくバイオリンを手にされるのなら、ぜひぜひ楽器についての知識を蓄えて、バイオリンを多面的に楽しむことをお勧めします。

というわけで、今日はバイオリン製作の歴史についてまとめます。パッと見、同じような形にしか見えないバイオリンですが、実は四つの型に分類できるのです。それぞれの特徴を分かりやすく紹介します。

四大ヴァイオリンモデル

ヴァイオリンには代表的な4つのベースになる型があります。

①アマティモデル 

②シュタイナーモデル 

③ストラディバリモデル 

④グァルネリモデル

これらは全て歴史に名を残す名工の名前を冠しており、4人の名工が制作したオリジナル楽器をモデルにして造られるヴァイオリンを○○モデルと呼んだりします。

ただ四大ヴァイオリンモデルと言っても、現代実際に作られるほとんどの楽器はストラディバリウスをコピーしているストラディバリモデル(以下ストラドモデル)です。

ストラディバリウスの名前は音楽にあまり関心が無い方でもご存知であろうと思います。数億の値段で取引されるヴァイオリンの王様です。現代の多くの楽器はこのストラディバリウスを教科書にして造られているのです。

 

膨らみ・アーチの違い

四つのヴァイオリンモデルを比較する一番分かりやすい場所は楽器の膨らみ・アーチと呼ばれる場所です。下の写真をご参照ください。

膨らみが大きい 膨らみが小さい
シュタイナー アマティ ストラド グァルネリ

 

左がハイアーチのシュタイナーモデル。
右がローアーチのストラディバリウスモデル。

基本的にヴァイオリンはボディーの膨らみが高くなるほど甘い音がするようになり、一方で出せる音量は小さくなります。

四大ヴァイオリンの中でもっとも古いアマティモデルは膨らみが大きい(ハイアーチ)作りになっています。ですからアマティモデルは現代のヴァイオリンと比較すると音量は小さめですが、その分甘い音がします。

そして次の時代のシュタイナーモデルはアマティモデルよりもさらにアーチが高くなります。音量はやはり小さめですが独特の甘い美しい音色が特徴。シュタイナーモデルの音色は繊細でなんとも言えず魅力的。

実は18世紀半ばまで、最も価値があり人気のあるヴァイオリンはこのシュタイナーモデルでした。モーツァルトの愛用したヴァイオリンもシュタイナーのもので、一時はストラディバリウスの4倍の価格で取引されていたと言われています。

そしていよいよストラドモデルが誕生するわけですが、ここで一気に膨らみが小さくなります。この膨らみ具合が現代の慣れ親しんだヴァイオリンの形です。音量重視ということになります。

最後に登場するグァルネリモデルはストラドモデルよりもさらに膨らみが小さく、ほぼ平らと言えるほど。よりパワーを持った構造になっています。

 

シュタイナーからストラディバリウスの時代へ

このように四大ヴァイオリンの際立った違いはアーチにあります。それは言い換えると、ヴァイオリンに求められる音色と音量の違いです。

なぜそのような違いが生じたかと言えば、主には音楽が演奏される場所の変化です。

元々ヴァイオリンをはじめとするクラシック楽器は良く響く教会の会堂や宮殿、貴族の屋敷の大広間などで演奏されることが主でした。ハイアーチのアマティやシュタイナーモデルが主流だった時代というのは、小・中規模の良く響く場所がヴァイオリンが活躍する主な舞台だったのです。ですから、そんなに大きな音量が出なくても良い音色が出ればそれが会場全体に響きました。

しかし、ストラドモデルの価値が一気に高まる18世紀半ば、音楽の演奏の場が大規模のコンサートホールへと急速に移行していきます。

当然求められる楽器の性能として、大ホールで大勢の人に届くパワーが重要視されるようになります。そう意味ではもっともアーチが平らなグァルネリモデルがもっとも現代的なヴァイオリンと言えるのかもしれません。

もちろん、音量が出れば良いということではなく、音量が出てしかも美しいヴァイオリンの響きを持っているゆえにストラドがこれだけ高く評価されるわけですが、音量という条件を外すならシュタイナーやアマティの楽器の魅力は今なおストラドと双璧をなすと言えるでしょう。

まとめ

ヴァイオリンはどのような場所での演奏に用いられるかによって、アーチ構造に変化が生じ、そのことによってそれぞれのモデルの価値に大きな変化が生じました。

何千人を収容するホールでの演奏が求められる現代においてストラドは最高のヴァイオリンですが、響きの良い小規模の場所での演奏が主だったモーツァルトの時代において最高のヴァイオリンはシュタイナーでした。

時代時代によって求められるものに違いがあり、それによって価値が変わるのがヴァイオリンです。

ともすると画一的な価値観で計られてしまいがちな弦楽器の世界ですが、それぞれのニーズに応じて相応しい楽器には違いがあるわけで、自分にとっての最高の楽器も人それぞれ。あなたにとっての最高の名器を見つけてください。

-弦楽器あれこれ

執筆者:


comment

メールアドレスが公開されることはありません。 * が付いている欄は必須項目です

関連記事

バイオリン(弦楽器)購入時の楽器調整 早わかり簡単ガイド

ブログの中で繰り返し ‟楽器購入に際しては必ず専門店で調整してください”と書いています。楽器店で直接買って「調整済み」と書いてあればその必要は無いのですが、ネットなどで取り寄せた場合、楽器調整は必須で …

バイオリンの値段はどうやって決まる?

ヴァイオリンの値段ほどミステリアスなものは珍しい!? 新品の量産型の楽器は最初から値段を決めて製造・販売しているので分かりやすいですが、管楽器と違いヴァイオリンは専門の道に進むと「定価○○円 型式HV …

お手ごろバイオリン購入時の注意点 削り出し工法とプレス工法

お手頃価格(安価)の楽器を選ぶにあたって、押さえておいたほうが良いバイオリンの制作や材料・構造の問題が幾つかあります。 良い楽器を購入するにはそれなりの知識を身につける必要があります。特に「安くて良い …

なぜ吹奏楽にコントラバスが入ってる?

吹奏楽とは字のごとく吹奏楽器で編成するオーケストラのことです。その中に打楽器も入っています。リズムパートが必要なことは誰でもわかりますが、ではなぜ弦楽器のコントラバスが入っているのか。吹奏楽部のコント …

長い間使われていなかったバイオリンの再生記録

知人から「全然使っていない古いバイオリンがあるけど」と声をかけてもらいました。時々この手の話しがありますが、十中八九安価な楽器が朽ち果てたような物。それでも見ないではおられない楽器好きの私です。 ダメ …