ヴァイオリンやコントラバスなどの弦楽器の中には必ず魂柱(こんちゅう)という棒がついています。
これはバイオリンの中を映した写真ですが、中に棒が一本立っているのが見えますね。これが魂柱です。なぜこんなところに棒が立っているのか?今回は魂柱のお話しです。
魂柱(こんちゅう)ってなに?早わかり簡単ガイド
魂柱の役割
英語ではSoudpostと言いますが、
弦楽器は、弓で弦を振動させ音を鳴らす楽器ですが、実は弦そのものから生じる音は非常に小さいのです。
左の写真は、夜間の練習やアンプに繋いで音を出す時に使うサイレントバイオリンという楽器です。
ご覧になって分かるように楽器のボディが無いので、直接生じる音は弦の振動音だけ。
弦の振動だけで出る音は本当に小さいので夜間に練習してもご近所迷惑になりません。つまり、弦だけでは楽器として機能しないのです。
上の図のように、弦で生じた振動・音が駒を通じて表板に伝わります⇒①
さらに表板に伝わった振動が、今度は魂柱を通じて裏板に伝わります⇒②
このようにして表板と裏板が魂柱によって繋がり振動が伝達されることで、弦楽器のボディ全体に響きが広がります。
その響きがf字孔から外に飛んでいくことで弦楽器の音になります⇒③
たった一本の棒ですが、この棒が弦楽器の音の生命線になっているゆえにまさに「魂柱」なのです。さすが文豪・夏目漱石ですね!
もしこの棒が無ければ表板まできた振動が裏板に伝わりませんので、魂柱の無い楽器でも音は一応鳴りますがスカスカで輪郭の無い弦楽器本来の音とはかけ離れたものになってしまいます。
魂柱で音色が変わります
これほど重要な魂柱なので“立っていれば良い”と言うものではなく、魂柱の立つ位置。材質や太さによって楽器の音が大きく変わります。
一応立てる場所の基準はありますが、それぞれの職人のこだわりや好みによってかなりの違いがありますし、演奏者が求める音色によって変化をつけてもらうことが可能です。
取り扱い注意
覚えておいていただきたいこととして、魂柱は接着されていません。響きを伝達するものなので、表板と裏板に挟まれて立っているだけですから、楽器を強くぶつけたりすると倒れます。
特に良くある失敗は、弦を全て緩めてしまうこと。
チューニングされた弦の張力はかなりのもので、駒を通じて表板を押し付けるように楽器にかなりの圧力がかかっています。ですから弦をすべて緩めると、この圧力が抜けて表板が外側に浮き上がります。すると挟まっていた魂柱は倒れてしまうのです。
こうなったら楽器屋さんに持っていて直してもらわなければいけません。ですから、弦は4本全てを同時に緩めてはいけません。弦を交換する時は一本ずつ取り外し新たな弦を付けていきます。
購入したらまず調整
このブログでも紹介したように、購入時は魂柱が適切な場所に立っていない可能性が高く調整が必要です。⇒バイオリン(弦楽器)購入時の楽器調整 早わかり簡単ガイド
職人さんが楽器の特徴を見ながら良い場所に立ててくれます。楽器を購入したらまず魂柱調整をしましょう。
そして楽器を弾き込んでいきながら、もう少しハリのある音が欲しいとか、低音をもう少し、高音にもう少しパワーがなどと希望が出てくるもの。
その時には、職人さんに魂柱調整で変化をつけてもらうこともある程度可能です。立てる場所、また魂柱そのものを変えてもらうと音色に相当の変化が生じます。
職人さんの腕が問われる仕事でもあり、こういったところが弦楽器の醍醐味。自分好みの楽器にチューンアップしていくとますます愛着がわいてきて演奏が楽しくなります。