「子どもの習い事にヴァイオリンを」と考えながらちゅうちょする方がたくさんいます。一番大きな要因はやはりお金がたくさんかかること。特に体の成長に合わせて買い替えなければいけないヴァイオリン特有の分数楽器の準備。色々な条件の違いによって値段の違いが大きいので実態が分かり辛く、それがますますバイオリンの敷居を高くします。
というわけで、我が家が子どものために準備したバイオリンを参考にしながら、お勧めの楽器や購入の具体的なアドバイスをそれぞれの分数ごとにまとめていきます。⇒分数ヴァイオリン購入記録(はじめの一歩)
この記事を読むと、それぞれの分数楽器の特徴に合わせた購入の目安。そしておススメ楽器も知ることができます。
今回はいよいよ六つ目・最後の分数ヴァイオリン、3/4サイズの紹介です。
分数バイオリン購入記録(3/4サイズ)
3/4サイズはおおむね130~145cmくらいの身長のお子さんが使用する楽器です。日本の9歳の平均身長が130cm、12歳が149cmですから個人差はありますが小学4年生~6年生くらいの間の体の成長に合わせた使用が一般的です。
小柄なお子さんもいらっしゃいますが、基本的には中学生になる段階で多少背が小さくてもフルサイズに移行することがほとんです。
3/4バイオリンの特徴
大きさ
写真を見ていただくと分かるように、3/4サイズとフルサイズバイオリンの大きさの違いはそれ程ではありません。鼻詰まりの分数バイオリン独特の音が無くなり、バイオリンらしい音が出るようになります。
ただフルサイズとの比較で言うと、大きさよりも厚みの違いが大きく、体が小さなお子さんが無理すると厚み分も負担がかかります。大きさは数センチの違いではありますが、演奏する子どもには決して小さなくない数センチなので無理は禁物です。
使用期間
上に書いたように4年生から6年生の間に使うサイズで、平均すれば他の分数バイオリンのように1年くらいの使用ということになります。
ただ、この時期の子どもの体の成長は個人差が非常に大きく、グングン背が大きくなるお子さんですと本当に僅かな期間だけ弾いてすぐフルサイズ。極端な例ですと、3/4サイズを飛ばしてフルサイズに移行したお子さんも知っています。その場合、少し1/2サイズを長めに使って一気にフルサイズにということになります。
一方、私の子どももそうでしたが小柄で成長がのんびりしていると、むしろこのサイズが分数バイオリンの中で一番長く使う、くらいのこともあります。対象の身長が15cmなので、伸びがゆっくりのお子さんはむしろ長く使うことになります。
ですから、3/4の楽器は1/2サイズの楽器と兼ね合わせてどの程度のものを購入するか考える必要があります。大体子どもの身長の伸びのペースは3・4年生くらいになれば分かってきますので、グングン伸びそうであれば3/4サイズの期間はかなり短くなります。僅かな期間のために高価な楽器を購入する必要は無いので、安価で済ませその分1/2楽器に少しお金を使うとか、フルサイズのために取っておくこともできるでしょう。
一方、身長の伸びがゆっくりのお子さんの場合、3/4サイズは重要になります。このサイズでどんどんコンクールに出場するお子さんもいるでしょう。一方、6年生でコンクールに出場するとすでにフルサイズを弾いているお子さんもいます。やむを得ないことですがただでさえ楽器の鳴りは全然違います。
我が家ですと一年半くらいこのサイズを使いましたしコンクールにも出場しました。この段階でのコンクールの結果はほとんど意味は無いですが、そうは言っても毎日一生懸命練習している本人とって楽器で負けるというのは悔しいこと。身長の伸びのゆっくりで頑張っているお子さんには少しでも良い楽器を持たせてあげたいものです。
お勧めの3/4サイズ楽器
おススメの楽器を幾つか紹介します。直ぐにフルサイズが視野に入っているお子さんは安めのもの。ゆっくりコースの方は少し頑張ってみるのも子どもさんの励みになると思います。
イギリスの老舗バイオリンメーカー、ステンターバイオリン。安価ですが良く出来ている楽器で、しっかり調整すれば十分に使うことができます。3/4サイズを直ぐに卒業してしまうようであればこれで十分。
こちらもステンターバイオリン。SV-180よりもう一つグレードの上のタイプです。値段を考えるとコストパフォーマンスかなり高いです。SV-180に比べてワンランク材質が良くなっているのでその分音質も良いです。
ドイツの老舗メーカー、カールヘフナー。日本でも昔から評価が高いですし世界中で愛されています。思い切ってヘフナーの楽器を使ってみるとドイツらしい重厚な音が楽しめます。値段が高くなってしまいますそれだけの値打ちのある楽器。
日本ではほとんど知られていないメーカーですが、アメリカではかなり人気があります。CremonaのSV-175。値段的に手頃でなかなか良くできた楽器です。アメリカではこども用の楽器としてしばしば選ばれるものでおススメです。
アメリカの会社ですが製造を中国で行うことで価格を低く抑えています。最近話題の葉加瀬太郎さんのオンラインバイオリン教室でこのEastmanが採用しているので人気が出ています。音も作りもしっかりしています。
まとめ
ついに最後の分数楽器にたどり着きました。
振り返ってみると一つ一つの楽器に親子の汗と涙がしみ込んでいてどれも忘れ難いバイオリン。こうやって大変なプロセスを経て習得していく楽器。でもそうやって親子で苦労する価値のある楽器でもあります。
分数楽器が終わる小学校卒業の頃には、コツコツ練習してくるとメンデルスゾーンのバイオリンコンチェルトが弾けるくらいの技術が身についていることも多いです。いよいよ中学校に入学してフルサイズの楽器になって、そこで改めてバイオリンをどのように位置づけていくかを考える必要があるかもしれません。
専門を選べばここからいよいよ険しい道のりが待ち受けています。専門を選んだお子さんが中学生になると、もうとにかく鬼のように練習しなければいけません。それでもバイオリンを好きでいられるかどうかが問われます。
仮に専門の道を諦めても、ここまで頑張ってきたお子さんはかなり自由に楽器を弾けるようになっていますから、これから一生の楽しみとしてバイオリンと付き合っていくことができます。
いずれにしても、素晴らしい人生の同伴者を得ることができるのは間違いありません。決して親子の苦労は無駄にはなりません。使い終わった6つの分数バイオリンは親子の素晴らしい思い出・絆として残っていくものです。