物心つく前に始めなければいけないヴァイオリンであるだけに、先生選びがとにかく大切。というわけで、先生の選び方について詳しく説明するシリーズの4回目、今日は先生のキャリア編です。
その1⇒子どものバイオリンの先生の選び方 (はじめの一歩編)
その2⇒子どものバイオリンの先生の選び方 その2(先生の年齢編)
その3⇒子どものバイオリンの先生の選び方 その3(お月謝編)
教えていただく先生の、バイオリニストとしての実績、指導者としての実績をどのように考えるかという内容です。
指導者と演奏者という2つの立場をどのように考えて先生を選んだらよいのか、非常に大切でありまた分かり辛いことでもあります。この記事を読むと、お子さんにとって良い先生のキャリアとはどのようなものかが良く分かります。
良い演奏家が良い先生?

優れたヴァイオリニストなら当然優れた先生だろうと思われるかもしれませんが、そもそもヴァイオリニストがみんな生徒さんを持つわけではありません。「私は弟子はとりません。子どもの指導はしません」という方もいらっしゃいます。
そのようなあまり指導をなさらない優れたヴァイオリニストと、何かの繋がりで知り合うことができ、指導していただけるチャンスを得ることがあるかもしれません。
ただ【優れた演奏者=優れた指導者】とは言えません。
一昔前は音楽の世界も「仕事は目で見て盗め!」的な世界でした。著名な演奏家が音大で教授などのポストを得て音楽教育を担うのが当然とされていたのですが、現代は音楽の本場ヨーロッパがそうであるように、優れた指導者・教育者であることは演奏活動の実績とは別のステータスとして重んじられるようになってきています。また指導のメソッドも飛躍的に充実してきているのです。
ですから、演奏者としての能力や経験だけで良い指導ができると考えるのは古い発想と言うことになります。
指導力と演奏力は無関係?

そうしますと今度は、演奏家としての実績が無くても指導に卓越した手腕を持っている先生であれば優秀な生徒さんを輩出できるのか、という問いが生まれます。
端的に言えばYESです。演奏家としては無名でも、優秀な生徒さんをたくさん輩出している先生は事実いらっしゃいます。
ただし【演奏家として無名であること=ヴァイオリンが上手くない】ではありません。
私の観察ですが、こういうケースの場合演奏家としての力を持ちつつ、あえて指導に特化することを選んだ方。また子育て等で演奏活動をストップせざる得ず、自宅でできるレッスンに比重を置いていかれるようになったなど、演奏者としての力を持ちながらあえて指導の道を選ばれた方が多いように思います。
天性の才能がある子どもさんが、天才肌の先生に師事して「見て盗め」で才能を開花させる例はありますが、それは極々少数。99%の凡人にとって「見て盗め」のレッスンは辛いものです。
良い先生はそれぞれの力量や特徴を見抜いて、その子どもさんの能力を最大限生かす指導を考えてくださいます。ですから、師事する先生を探す時には、一流の演奏者ではなく一流の先生を求めるということを忘れないようにしてください。
見て盗むのも大事なことですが

その上で、しかし演奏者としての力量が指導を受ける上で無関係とも言えません。矛盾するようですが、子どもは「見て盗む」特別な能力を持っています。目の前で先生が奏でてくださる最高の音に触れることによって、子どもは10の言葉の指導に勝る上達のきっかけを得るところがあります。
また瞬間芸術である音楽にはステージに立ち続けているゆえの特別な感性があります。それはレッスン室の中だけでは生まれないものでもあります。
ただ優れた指導者は大抵、優れた演奏者と繋がっているものです。ご自身が現在演奏活動をそれほどしていなくても、豊富な人脈の中でその辺を補うことがおできになりますから、一流の先生であればあまり心配する必要はありません。
まとめ

良い演奏者と良い指導者はイコールではありません。
指導者を求める時には、指導のプロを探すことが大切です。指導のプロは教え方が上手いだけでなく、後進を育てることに使命感を持ち、子どもさんのヴァイオリン教育に誇りを持っています。
プロフェッショナルと言える先生に出会うことで、子どもさんはヴァイオリンが上達するだけでなく、ヴァイオリンを通して人間的な成長の機会をも得ることができます。